692.記憶にございません(外部ファミリー)
「――だったじゃないですか」
「そうそう。それで、ウラヌスが――」

 紅茶片手に楽しそうに会話をする二人を頬杖をつきながらぼんやりと眺める。こんなときでも零れそうになる溜息を我慢してしまう僕はなんて偉いのだろうと少し慰めてみる。
 二人が話しているのは僕のことなのに僕はまったくついていけない。二人が頭に浮かべているのは僕の知らない僕のこと。それはもう僕と切り離して別の人間だと言ってもいい。
 しかしそうすると二人が話しているのは僕以外の誰かのことになってしまいそれは面白くない。だから仕方がなく二人が話しているのは前世の僕のことなのだと言い聞かせている。
 それでもやはり前世の僕(ウラヌス)に対して嫉妬心を抱いてはしまうのだけれど。

「ねぇ、はるか。覚えてるでしょう?」

 突然みちるが僕に話しを振ってきたので慌てた。頬杖を解き、ああそうだね、なんて相槌をうってはみたものの全く覚えていない。それでもみちるは満足したようでまたせつなとのお喋りに戻ってしまった。
 二人の会話にどうしようもなく距離を感じてしまう自分に腹が立つ。

「なあに、はるか」

 またみちるが僕を見た。ああそうだね、と頷くとみちるは顔を曇らせ視線を落とした。わけが分からず僕も視線を落とす。

「あ」

 するとそこにはみちるの手を軽く握っている自分の手があって。

「ああ、ごめん。なんでもない」

 慌ててみちるから手を離してみたけれど。

「ほら、ね」
「そうですね」

 何故か満足げな笑みを浮かべてせつなと言葉を交わすと。みちるは僕の手を追いかけしっかりと指を絡めた。
(2011/04/11)
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