694.帳簿(蔵黄泉)
「オレ、会計士としてお前に雇われてたんだったかな」
「そう言うな。嫌いじゃないだろう、こういうこと」
「国家自慢のコンピュータはどうした?」
「その気になれば破壊できる」
「紙なんて燃やしてしまえるだろう?」
「金庫に保管しておく」
「それだって壊される」
「あれは大丈夫だ」
「ほう……。だが、パスワードを解かれれば」
「俺の妖気にしか反応しない」
「なるほど。で、どうしてオレなんだ?」
「計算は得意だろう?」
「それまで会計士として使っていた奴はどうした」
「殺した」
「オレに帳簿をつけさせるためにか?」
「違う。金を、誤魔化していたんだ」
「ほう」
「修羅の命令で」
「…………」
「お前なら、上手くかわせるだろう?」
「……修羅くんに、罰は?」
「与えるわけないじゃないか! アイツは未だ善悪の判断が出来ていないんだ」
「……ダメ親」
「なんだと?」
「いいのか? 修羅くんに渡さなくても、オレ自身が横領するかもしれない」
「お前は宝……美しいものに興味があっても金銭には興味がないことは知っている」
「けど、金を捨てることでお前を困らせることは出来る」
「…………」
「…………」
「信じてるさ、蔵馬、お前を」
「信じたい、の、間違いだろ」
「……そうだな。それは素直に認めよう」
「…………」
「俺の信頼を裏切らないでくれよ。もう、二度と」
「……黄泉」
「じゃあ、後は任せた」
「黄泉!」
「どうした? この部屋に一人は――」
「電卓」
「は?」
「じゃあ、算盤」
「……分かった。用意しよう」
(2012/02/19)
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