711.拾って捨てて拾って(不二塚)
「どういうつもりだ?」
「何が」
「お前はっ。……一度、テニスを捨てた」
「しょうがないよ。僕は一度に沢山のものを持つことが出来ないんだ。何かを手に入れるためには、何かを捨てないと」
「それで? 手が空いたから、また拾うのか?」
「腹が立つかい?」
「…………」
「テニスしか楽しみを知らない君には、理解できないよね、きっと」
「……不二。オレは」
「僕があの時捨てたのは。君とテニスだけど。今回拾ったのはテニスだけだよ」
「分かっている」
「だったら」
「それでも、オレは。……お前と、またテニスをしたかった」
「……相変わらずだね、君は」
「不二?」
「手に出来るものの数が決まってるなら、テニスを追いやってでも自分がそこに入ろうとは思わないんだから」
「…………」
「まぁそんな君だから、好きにもなったし。……嫌いにも、なったんだけど」
「…………」
「さぁ。行こうか、手塚」
「え?」
「僕と、打ってくれるんでしょう?」
「……ああ。行こう」
(2010/09/08)
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