726.百貨店巡り(蔵飛)
「なんだ、そのふざけた恰好は」
「ハロウィーンですからね。買ってきました」
「何だそれは」
「いいから、いいから。はい、コレつけて」
「何だ?」
「狐の耳です。探すの苦労したんですよ。狼男ならまだしも、妖狐なんて仮装しようと思わないですから」
「…………」
「コレも」
「尻尾か?」
「正解」
「ふん。くだらんな」
「じゃあ、あなたがせがまれますか?」
「何だ?」
「トリック・オア・トリート。お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ」
「は?」
「仮装した人は、訪ねた相手にそう言うんですよ。あなたが仮装しないなら、オレが仮装しますから。あなたはオレに悪戯されてください」
「っまて。どうして悪戯に」
「だって飛影、お菓子なんて持っていないでしょう?」
「……それは」
「だから、悪戯するんです」
「ふざけるな。どうしてその二択なんだっ」
「ハロウィーンですから」
「理由になってない」
「じゃあ、妖狐の仮装をしてください。そうしたら、悪戯はされません」
「……だったら、俺が悪戯しても構わないんだな」
「えっ」
「お前は菓子など食わん。つまりお前は菓子を常備していないということだ。違うか?」
「残念。ちゃんとその仮装道具と共に、お菓子を買ってきてます」
「……ちっ」
「でも」
「?」
「悪戯したいなら、してもいいですよ。お菓子、渡さなければいいだけの話ですから」
「…………」
「どうします?」
「……い」
「い?」
「いや、だったら俺は、菓子をもらうことにする」
「…………」
(2011/11/01)
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