729.口笛吹きつつ(はるみち)
「はるか。お願い、それやめて」
「え?」
「口笛」
「ああ。すまない。絶対音感の持ち主には、ちょっとしんどかったか」
「そういう意味で言ったんじゃないわ」
「……会話なら。その時は僕だって黙るさ」
「それも違うわ」
「じゃあ、何?」
「……だって。今、夜なのよ?」
「そうだね。今は、星を見た帰りだ」
「だから、その」
「?」
「夜に口笛を吹くと蛇が出るって……」
「蛇? ヘビってこと? なんだ。みちる、ヘビが怖いのか」
「…………」
「っはは。可愛いな」
「はるかっ」
「悪い、悪い。……でも、その話、地方によって違うんだよな。一般的なのは蛇だと思うけど。ジャは蛇じゃなく邪、つまり妖怪や幽霊だって説もあるんだぜ?」
「…………」
「っと。余計怖がらせちゃったかな」
「……私、蛇が出るくらいなら、まだ幽霊が出てくれたほうがマシだわ」
「え?」
「ねぇ、はるか。撤回するわ。口笛吹いてもよくってよ」
「……あ、そう」
(2010/08/10)
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