736.香ばしい(蔵飛)
「影しか残さず総て焼き尽くす、か」
「何だ?」
「それだと、においも残らないだろう」
「それが何だと言うんだ?」
「妖怪の焼けるにおいは、好きなんだがな」
「……妖狐(おまえ)はな」
「何だ?」
「ニンゲンのときは、嫌いだと言っていただろう。血の匂いも」
「……嫌いなわけではない」
「じゃあ何だったんだ?」
「妖狐の血が、騒ぐのでな」
「何か不都合でもあるのか?」
「お前が、嫌がるだろう」
「何?」
「お前は、妖怪のオレよりも人間のオレの方が好きなんだろう。人には、さっさと人間界を捨てて魔界で暮らすように言ってはいるが」
「…………」
「図星を指されたからってそんな表情をするな。犯したくなる」
「……姿や口調が変わっても、言っている内容は同じだな」
「当たり前だろう。オレはオレなんだ。……嬉しいか?」
「燃やすぞ」
「ふ」
(2011/01/21)
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