748.脂汗(不二観)
「う、あ……」
 ミシミシと音が聞こえてきそうな程の圧迫感と今までに感じたことのない痛みに、観月は呻くと枕に強く後頭部を押し付けた。
 シーツを掴んでいた手は、それでも収まらない痛みに宙を掻き、汗で湿り気を帯びている背中を掴む。
「ひっ」
 何の予告もなく与えられた衝撃。一瞬手から力が抜けたが、滑り落ちる前に深く爪を立てた。そのことに、ずっと余裕の笑みを浮かべていた不二が、顔を歪めた。
「……暴力反対だよ、観月」
「どっちがっ」
 呼吸を整える間も明けず、打ちつけられる腰。痛みしか感じない観月は、短い声を上げるたびに、仕返しとばかりに爪を深く食い込ませていった。
 そうして、気付かぬうちに口から漏れる声に熱がこもる頃、満足したのかようやく不二の動きが止まった。逆に、物足りなさを感じた観月の腰が、無意識に動く。
「……ボクは汗をかかないんだなんて言ってたけど。冷や汗と脂汗は出るんだね」
 青い眼を細めながら嫌味たっぷりに言うと、不二は笑みを浮かべた口から出した舌で観月の額に浮かんだ汗を拭った。クスクスと笑いながら、再び動き始める。しかし、今度はこれまでとは違って、ゆっくりと内部を探るようなものになっていた。
 観月の口から、長く続く声が漏れる。
「これでも、まだ暴力?」
「っ」
 不二の言葉に、観月は立てていた爪をようやく離した。シーツを掴もうとしたそれを不二の手が絡めとり、押さえつける。
「離してくれたってことは、僕の愛を認めてくれたってことなのかな?」
「誰がっ……」
「それなら。これからゆっくり理解させてあげるよ」
 睨みつける観月の視線を受け流すように笑うと、不二は探り当てた場所を抉るように、何度も激しく腰を打ちつけた。
(2010/08/11)
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