750.白々しい(蔵飛&ムクロ)
「やる」
「なんだ?」
「……カーネーションという花だそうだ」
「なんだ。お前からじゃないのか」
「蔵馬からだ」
「……何?」
「今日はハハノヒという奴らしいのでな」
「ハハノヒ、ははのひ……母の日、か。で、だからなんでそんなもんを俺に? しかも、お前からじゃなくてアイツからということでなんだろう?」
「当たり前だ。何故俺が貴様に何かやる必要がある?」
「お前な。お前が魔界にいる時の宿は何処だ?」
「蔵馬はそんなこと要求しない」
「あっちはホーム、こっちは言えばホテルのようなものだ。あっちが要求する方がおかしいだろう」
「ふん。俺は向こうを居場所と決めたつもりはない」
「だがここはお前の居場所じゃない。居場所だったこともない」
「…………」
「だから、これをアイツが俺に渡すのは間違ってる。返してこい」
「…………」
「何だ、そのツラは」
「蔵馬の言うとおりだな」
「は?」
「恐らくは貴様が激怒して花束を突き返してくるだろう、と。まぁ、激怒まではしてい――」
「あのキツネっ」
「……兎に角、俺は渡したからな」
「持って帰れ」
「蔵馬の予想通りになってもいいのか?」
「……捨てて来い」
「それくらいは自分でしろ」
「自分で捨てたら一度は受け取ったことになる。お前が捨ててこい。これは命令だ」
「一時は魔界の支配を目指した奴が、こんな下らんことを命令するんだな」
「……死にたいか?」
「これくらいで腹を立てるな。子供じゃあ――」


「それで。花は?」
「他に何か言うことあるだろう」
「ご苦労様でした。というか、また、腹を殴られたんですね」
「うるさい。大体お前が妙なことを頼むから」
「ありがとうございます。で、受け取ってくれました? 彼女」
「さぁな。百足から吹き飛ばされたから、後のことは知らん。少なくとも、あの後部屋に花は残されてたはずだ」
「そうですか」
「それで、お前は何がしたかったんだ?」
「決まってるじゃないですか、義母(はは)に花束を贈りたかったんですよ」
「は?」
(2011/04/21)
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