754.突飛な仮説(蔵飛)
「オレが、雪菜ちゃんの親父なんじゃないかって」
「は?」
「この間。桑原くんの家に行った時に、雪菜ちゃんに言われました」
「……なんだと?」
「オレの体から、あなたの妖気の欠片を感じたらしくて。彼女はそれを、オレ自身が発してる妖気だと思った、と」
「馬鹿馬鹿しい」
「彼女もすぐに思い直しましたよ。植物を扱うオレが炎も扱うなんて、ほとんど有り得ない話ですからね」
「ふん。……おい、待て」
「はい?」
「雪菜は、何て言ったんだ?」
「だから、オレの体からあなたの妖気を」
「待て」
「ん?」
「どうして、そうなる?」
「それはもちろん、こうして毎日のようにあなたとセッ」
「そうじゃない。オレの妖気がお前の体に染み付いていたとして、どうしてそれがアイツの父親だという発想に――」
「あなただけですよ、知らないのは」
「……貴様。まさか」
「教えてはいません。ただ、彼女が余りにも自然にあなたを兄とて認めていたので、否定もしませんでしたけど」
「ちっ」
「ねぇ。じゃあ、どうしてオレからあなたの妖気を感じたか。彼女はどう思ったんでしょうね?」
「…………」
「睨まないで下さいよ。言ってませんよ、オレは、何も。その前に、彼女はオレが父親であるはずなど有り得ないと言ってしまったし。彼女が次の疑問を浮かべる前に、オレは桑原くんと本題に入ったので」
「…………」
「けど。きっと、あなたが兄だということに気づいたように、いつかオレたちの関係にも気づくでしょう。群れることを嫌う妖怪同士が一緒に居る理由なんて他に」
「幾らでもある」
「あるんですか? オレと一緒に居る理由が。他に?」
「……幾らでも、考え付く」
「考え付く、ね。だと、いいですが」
「……ちっ」
(2011/06/13)
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