756.緑の中を走り抜ける(はるみち)
「って」
「我慢して」
「沁みるんだよ。もう少し優しくしてくれないか?」
「大体、はるかがいけないのよ。変身もしていないのに妖魔を追いかけて森の中に走って行くから。妖魔からは傷を負わされなかったのに、その途中の木々でこんなに擦り傷を作るだなんて」
「しょうがないだろ。忘れてたんだ」
「どうしたら忘れられるのよ……」
「でも。君が無事で良かった」
「当たり前よ。私は変身していたんだもの」
「そういう意味じゃなくて。……みちる」
「ここも。血、出ているわ」
「もう止まってる」
「でも、消毒しないといけないわ」
「だったら沁みないようにしてくれないか?」
「どうやって?」
「そんな消毒液なんか使わずに、さ。昔から言うだろ? こんなかすり傷、舐めときゃ治るって」
「それなら、いま絆創膏を貼った頬の傷も、舐めた方がいいのかしら?」
「え。あ。いや、それはもう治療済みなわけだし、さ。おい。みちる、何だよ、その楽しそうな顔は。やめろ。剥がすなって。おい――」
(2011/05/31)
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送