761.熱い魂(蔵飛)
「飛影」
 名前を呼び、小さな体を抱き寄せる。雨に濡れた冷たい肌。髪を拭ってやろうとタオルを被せると、いい、とぶっきらぼうな言葉に振り払われた。
「どうせ濡れる」
 唇が触れ、そのまま押し倒される。見下ろす彼の顎から落ちた滴が、オレの首筋を伝った。ひやりとした、刃をあてられた時にも似た、感触。
「どうした?」
「……いいえ」
 頭を振り、今度はオレから熱い口付けを交わす。体の位置を入れ替えようとしたがそれは叶わず、珍しく彼が冷たい手でオレの体を弄ってきた。
 冷たい指先。追いかけるように、あたたかい舌が体を這う。いつまで経ってもぎこちなさの取れない彼の愛撫に、じれったさから吐息が漏れる。
「お前の魂を見てみたかった」
「そんなところにオレの魂はありませんよ」
 胸の上で立てられた爪。その手を掴み抱き寄せると、今度こそ体の位置を入れ替えた。
「それならお前の魂は何処にある?」
「心を魂というのなら、きっと」
 彼の胸の中心を、人差し指で軽く小突く。
「だから。オレはあなたが死んでしまうと、一緒に死んでしまうんです」
「馬鹿か、お前は」
「ええ。でも、あなたの魂を取った海藤には頭脳で勝ちましたけどね」
 笑うオレに、彼が忌々しげに舌打ちをする。構わず、オレは冷たい彼の体を温めるよう愛撫を再開する。
 いつか本当に、オレの魂も彼の中に溶け込んでしまえればいいなどと。そんな馬鹿げた願いを込めながら、体温だけを彼の体に溶け込ませて――。
(2011/06/03)
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