783.そっぽを向く(不二塚)
「どうして、そうやってすぐにそっぽ向くのかな?」
 カメラを下ろすと、不二は溜息混じりにいった。
「仕方ないだろう。苦手なんだ」
 眼鏡を直しながら、呟く。腕を下ろすと、手の届く距離まで近づいた不二が真っ直ぐに俺を見つめていた。
 10秒とせずに、目をそらす。
「……苦手なのは、カメラじゃなくて僕なのかな?」
 クスクスと笑いながらオレの視線とは反対に並ぶと、不二はオレの肩に寄りかかってきた。
「触れるのには、慣れてきたのにね」
 猫のようにオレの腕に頭を擦り付ける。そらしていた視線を不二に向けると、タイミングを計っていたかのように不二の動きが止まり、オレを見つめた。
「駄目。させない」
 視線を動かす前に不二の手がオレの顎を掴んだ。瞳だけでも動かしたかったが、もうどうしたって不二が視界に入てしまう程に、その距離は縮まっていた。
「眼鏡、外すと見てくれるんだよね」
「止めろ」
 唇を離すと、不二はオレの顎を掴んでいた手で眼鏡を取ろうとした。その手を払いのけ、少しだけ距離をとる。
「あと、怒った時は見つめてくれる」
 まだ持っていたカメラを素早く構え、不二がシャッターを切る。たかれたフラッシュに目を細めると、ごめん、と悪びれてもいない声で、不二はもう一度シャッターを切った。
(2010/08/18)
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送