784.後ろ向きな励まし方(不二塚)
「ねぇ手塚。僕が死んだら、どうする?」
「さぁな」
「どうもしない?」
「考えたことも無い」
「じゃあ、考えて」
「……現実味がない」
「だったら。僕たちが分かれたら。僕が、遠く離れた場所へ引っ越してしまったとしたら」
「…………」
「どう?」
「安心しろ。お前のことはすぐに忘れてやる。だからお前はオレから離れて好きなことをやればいい。そうすれば、いつかお前だってオレのことを忘れられる」
「……君のことは、忘れられないよ。いや、世間が忘れさせてくれないんじゃないかな」
「なに?」
「だってきっと、すぐにニュースで騒がれるよ。日本の代表的なテニスプレイヤーとして、ね」
「それをいうのなら、お前だって同じだろう?」
「僕?」
「写真家に、なりたいと聞いたが」
「……誰から?」
「由美子さんから」
「……姉さんも、お喋りだな」
「オレは留学をする。だからお前も」
「別れられる?」
「いつか忘れる」
「僕は忘れない」
「だが、オレは忘れる。だからオレの心配は無用だ。お前は、お前の心配だけしていろ」
「僕が自分の心配が苦手だってこと、知ってるよね?」
「だったら何の心配もしなければいい。違うか?」
「……ねぇ」
「何だ?」
「もしかして。僕、励まされてる?」
「お前が望んだことだろ」
「手塚」
「なんっ……」
「やっぱり。別れられないや。どれだけ遠く離れても。君が僕なんか見なくなったとしても」
「……バカだな」
「うん。そうみたいだ」
(2011/05/05)
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