787.寸暇を惜しむ(不二塚)
「そんなに練習してたら、折角治った肩や肘をまた壊すよ」
「肘は先輩に殴られたからだし、肩はイップスによるものだ。練習のし過ぎが原因ではない」
「手塚。僕の話をちゃんと聞いて」
「どけ。怪我をしたいのか?」
「こっちの科白」
「オレがドイツに行くのは知っているだろう?」
「だからもう別れようって話なら聞いた」
「だったらそこをどけ」
「僕は頷いてないよ」
「留学は決まったんだ」
「別れること」
「…………」
「せめて、あっちに言ってから別れを切り出してくれないかな。まだ想像の段階で、離れることや待つことに耐えられない、なんて。決め付けて欲しくない」
「既にお前はオレがテニスばかりしていることに耐えられなくなってる。だからこうしてオレの練習の邪魔をしにきた。だろう?」
「違うよ。だって、まだ別れてないから」
「悪いが、今は不二に構っている暇はない。一分一秒でも惜しいんだ」
「僕と一緒にいることは、君にとってただの暇潰しだったんだ」
「何?」
「暇がないから僕には付き合えないって、そういうことだよね」
「それは……」
「練習の邪魔して、ごめん。でも、君の体が心配だからっていうのは口実でもなんでもなく、本当なんだ。毎日練習するなら練習するで、ちゃんとそれなりの休憩ははさんでね」
「不二?」
「帰るよ。まだ、別れる気はないけど。君がドイツに行っても想い続けられるように、今から練習しておくから」
「……不二!」
「何?」
「練習するなら、練習するで。ちゃんとそれなりの休憩ははさめ」
「――え?」
(2011/06/27)
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