797.噴水前(はるみち)
「みちる?」
「……はるか。早いのね。まだ、時間の20分前よ」
「君だって。手、随分と冷たいな。いつからここに?」
「貴女にメールをしてすぐよ」
「そんな。じゃあ、二時間も前から? どうして……。大体、待ち合わせなんて。いつもみたいに僕が迎えに」
「いいのよ」
「よくないよ。こんなに冷えて……。それに、もし誰かに声でもかけられたら」
「声くらいかけられたって構わないわ」
「僕が構うんだ」
「どうして?」
「どうしてって」
「貴女という人がいるのに、私が他の人の誘いに乗るとでも?」
「だけど、強引に……」
「連れて行かれる可能性が、あるのかしら?」
「それは……」
「心配しないで。何度も言っているわ。自分の身くらい自分で守れる。相手が人間なら、特に」
「けど」
「たまには待っていたかったのよ」
「そんなの、君のマンションでだって出来るだろ?」
「あそこは、暇を潰せるものが色々あるから。そうじゃなくて、貴女のことだけを考えて待っていたかったの」
「…………」
「はるか?」
「何でもない」
「呆れた?」
「いや」
「じゃあ、なあに?」
「い、いいから。ほら、みちる。行くよ」
「……ええ」
(2010/11/17)
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