804.閉塞感(蔵飛)
 お前はいつも部屋にいるんだな。そんなことを彼に言われた。よくこんな狭い中で何時間も過ごせるな、と。
 開けたままの窓から除く空は真っ青で、入り込んでくる風は髪をさらって心地がいい。こんな日に、一日。部屋で過ごすのは勿体無いと、きっと誰しもが思うだろう。
 けど、オレはこの部屋の外が余り好きではない。
 息苦しいと彼はオレの部屋に対してたまにいうけれど、オレからすれば部屋の外の方が息苦しい。
 人間らしく。もう意識しなくても平気なはずなのに、頭の片隅でその言葉がぐるぐると回って、鬱陶しい。
 けれど、この部屋では。彼の、前では。オレはオレのままでいられる。それは決して、オレの望んでいる姿ではないが。
「飛影」
 窓を閉め、振り返る。ベッドの片隅で膝を抱えていた彼は、顔を上げると挑発的な笑みを作った。手を伸ばし、唇をなぞる。
「欲求不満なら、人間界など……」
「これが本当のオレなんですよ」
 だから、何も溜まってなかったとしても、あなたを求めてしまうんです。
 啄ばむようなキスを交わしながら、彼の体を倒す。これからもっと狭い部分に押し入ろうとしているのに、何処を探しても、オレの中には閉塞感なんて見つからない――。
(2011/02/01)
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