811.毒も薬も使いよう(はるみち)
「毒にでも薬にでも」
 気だるそうに私を抱きしめながら、はるかが言った。なあに。見つめ合って尋ねる私に、無理矢理口元を吊り上げて笑う。
「普段の、君は。僕を癒してくれる薬になるけど。こういう、疲れてるときには。……毒だよなぁ」
「私?」
「そう。みちる。猛毒だ」
 そう思うなら、摂取しなければいいのに。はるかは唇を重ねると私の舌を絡めとった。
「はるかさん? 疲れているんじゃなかったのかしら」
 私を押し倒し首筋に舌を這わせているその頭を撫でながら、少し意地の悪い声で言う。疲れてるさ。はるかの呟きが、湿った首筋に冷たく響く。思わず身を震わせると、喉の奥ではるかが笑った。
「だから毒だって言ってるんだ。今の君は、僕を更に疲れさせる」
「だったら……」
「解毒剤が見つからないんだ。もう、毒の進行は止められない」
 長い指がブラウスのボタンを外していく。その動きがいつもより少しだけ重たそうに見えるのは、きっと気のせいなんかじゃない。
「困った人ね。知らないわよ?」
「僕だって、知らないさ。君のせいなんだから」
「はるかが勝手に毒を口にしたんでしょう?」
 もう、と不満げな声を上げながら。それでも私は、促すようはるかの背に手を回した。
(2011/02/21)
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