８１７．小さいことは良いことだ？（蔵飛）
「聞きましたよ」 「何だ？」 「時雨に、背の高くなる方法を訊いたとか」 「……ふざけるな。誰がそんなことを」 「この間、ムクロに頼まれていた薬草を届けに行った時に、ね。時雨なんかは、今でもムクロを崇拝しているから、自分の身に起こったことは大体報告しているらしいよ」 「ちっ。おしゃべりめ」 「何でそんなに身長を望むんですか？　オレは良いと思うけどな、小さくて。ほら、ジャストサイズ」 「抱きつくなっ。それはお前の都合だろう？」 「オレの都合イコールあなたの都合でしょう」 「違うっ」 「ムキになって。かわ」 「それ以上言ったら、殺すぞ？」 「オレが死んだら、泣くのはあなたですよ？」 「誰が」 「可愛い、と。言われるのが不満ですか？」 「貴様だって女に間違われるのは不満だろう？」 「まぁ、それは、確かに。でも、飛影になら間違われても構わないですよ」 「は？」 「あなたが、それをオレの魅力の一つだと思ってくれているなら、の話ですが」 「…………」 「オレは、あなたの背の低さも、魅力の一つだと思ってますから。だからと言って、大きくなったから嫌いになるということはないですが」 「…………」 「まぁ、あなたが他人を頼るくらいなんですから、よほど深い事情があるのでしょう。だったら、オレは止めませんよ。なんなら、オレが薬を調合してあげましょうか？」 「…………」 「飛影？」 「いらん」 「えっ？」 「その代わり、お前は一生そうやって座っていろ」 「――は？」
(2011/01/06)