827.薫風(蔵飛)
「何をしている?」
「いつもとは、立場が逆ですね」
「同じだろう?」
「視線は、同じかもしれないですけど、ね。……隣、座りますか?」
「元々、その枝は俺の場所だ」
「そうでしたね。お邪魔しています」
「フン。……で、何をしているんだ?」
「少し、風を浴びていたかっただけです。緑のにおいのする、ね」
「狐」
「あなたが季節に鈍感なだけですよ」
「生憎、俺は季節などに左右されるほど柔ではないのでな」
「冬になればコタツに潜りに来るくせに?」
「…………」
「カキ氷、お好きでしたよね?」
「…………」
「春は桜に嫉妬を覚えるし」
「うるさい。それ以上言うと」
「ここは、オレのテリトリーですよ?」
「ちっ」
「別に、あなたに人間らしい生活を送れなんて言ってるわけじゃないですから。でも、勿体無いですね。こんな心地いい風が分からないだなんて」
「そんなもの分からずとも生きていける」
「それもそうなんですけど、ね。でも、飛影」
「何だ、うるさいな」
「せめて、オレの匂いくらいは分かっていてくださいね」
「……尚更、無理だな」
「えっ?」
「自分の匂いなど、分かるやつはいないだろう?」
「……飛影」
(2011/05/16)
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