839.雨天決行(はるみち)
「参ったな」
「え?」
「雨。大分酷いからさ。今日一日はもつと思ってたんだけど」
「私の記憶違いじゃなければ、登校するとき傘を持っていなかったかしら?」
「持ってるよ。ほら」
「それなら何を困っているの?」
「……今朝の予感、まさか忘れたわけじゃないだろ?」
「ええ。絶対にとは言い切れないけれど、恐らくは今日、妖魔が現れるわ」
「だからさ。こんな雨の日くらい、お互い休戦にすればいいのに。雨天決行しなければならないほど、あっちは予定でも詰まってるのかな」
「まぁ、切羽は詰まっているんじゃないかしら。闇雲に人を襲うことをやめて、タリスマンを探すという目的を持つようになってから大分経つけれど、三つのタリスマンのうち一つも見つけられていないんだもの」
「つまり、向こうはそれだけ急かないといけない事情が在るわけだ。地球を征服したいだけなら、そこまで急く必要もないだろうし」
「そうね。このままずっとタリスマンが見つからなければ、あるいは」
「まさか、敵が自滅するとか、そんな楽観的なことを言い出したりはしないだろ?」
「……しないわ」
「どうだか」
「雨天中止なんて考える方が、楽観なんじゃなくて?」
「雨の中の戦闘なんて、デメリットしかないだろ」
「向こうはもしかしたら、水に強い用意しているかもしれないわ」
「……不安にさせるようなこと、さらりというな」
「はるかだって、その可能性を考えなかったわけじゃないでしょう?」
「それはそうだけど、さ」
「私は、雨天決行でも構わないわ」
「何で」
「ねぇ。その傘、私も入っていいんでしょう?」
「え。あ、おい、みちる。だって君は自分で傘――」
「さ。妖魔が出そうなところへパトロールに行きましょう?」
「……ったく」
(2011/05/06)
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