860.火をつける(蔵飛)
 唇を離すと、蔵馬は口元を歪めて笑った。それまでの探るような手つきから、確信を持ったそれで俺の体をベッドへと押し倒す。
 お前は、勘違いをしている。湿った感触を首筋に感じながら、思う。
 蔵馬は、キスさえ出来れば、唇を合わせれば火がつくと思っている。だからそれまでは俺に対して必要以上の優しさを見せる。
 だが実際は違う。実際は。
「飛影?」
「なんでもない。いいから続けろ」
「……はいはい」
 俺の言葉に意外そうな顔は見せたものの、蔵馬は頷いて微笑むと、止めていた指先を再び這わせた。その動きには最早躊躇など無い。
 馬鹿だな。
 髪を掴んで蔵馬の顔を引き上げさせる。そのツラを見ているだけで、俺の体は容易く熱を持つ。
「だから。なんなんですか、さっきから」
「なんでもない」
 手を離し、今度は俺から唇を重ねる。
 万年発情期だと、蔵馬のことを言ってはいるが。その姿を見ただけで欲情する俺も、人のことは言えないだろうと、そんなことを思っては笑った。
(2011/04/27)
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