861.油を注ぐ(はるみち) |
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「はーるーかっ」 「わ。ちょっと、みちる。急に抱きつくなよ。危ないだろ。いま君を支えられないんだから」 「ほたるの自転車に何をしているの?」 「油差してるんだ」 「油?」 「ギイギイ音がするってほたるが言ってたから。バイクの点検ついでにね。君が抱きついてきたのが背中でよかったよ。まぁ、しゃがんでいる時にっているのは、良くないけど」 「正面、大分汚れているわね」 「というか、つなぎ着てるときは抱きつくなって、前から言ってなかったか?」 「そうだったかしら?」 「いいや、言ったね。記憶力の良い君のことだ、本当はちゃんと覚えてるんだろ?」 「覚えていても、それに従わなければいけない決まりはないわ」 「危ないだろ」 「だったらちゃんと抱きとめてくれればいいじゃない」 「服も手も油だ何だで汚れてるんだって言ってるだろ」 「だからって、私に触れてはならない決まりはないわ」 「そんなことしたら君が……」 「なあに?」 「なんでもない。……なあ、みちる。もう点検も終わったから、これからちょっと買い物に行かないか?」 「買い物?」 「そう。君のサイズに合うつなぎを買いに、さ」 |
(2012/01/11) |
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