862.塩を塗りこむ(蔵黄泉) |
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「蔵馬。怪我をしたのだが」 「そう」 「蔵馬」 「救護班、呼ぶか?」 「……冷たいんだな」 「そうか?」 「修羅にはお手製の薬草で傷の手当をしてあげたそうじゃないか」 「まぁ、修羅くんのは擦り傷だったからな。だがお前のは……。どう見ても救護班を呼んだほうがいいだろう」 「ふはは。大丈夫だ。コレくらいの傷。救護班など呼ばなくとも舐めておけば」 「だったら舐めておけ」 「舐めてくれないか?」 「ふざけてるのか?」 「本気だ」 「……兎に角、オレには手におえない。救護班を呼ぶ。それと、清掃班だな。オレの部屋が血だらけだ」 「そんなっ。じゃあ俺は何のために無駄に傷を受けたと……」 「何?」 「え、あ。いや……」 「……しょうがない。今、薬作るからそこで待ってろ」 「ああ」 「座るなよ」 「?」 「血がつく」 「…………」 「…………」 「…………」 「ほら」 「……もう出来たのか?」 「まぁ、常備しているものに多少手を加えただけだからな。コレはお前専用だ。他の奴には使うなよ」 「あ、ああ。……で?」 「は?」 「塗ってはくれないのか?」 「血を拭くものがない」 「……コレを使え」 「これはオレのシーツだ」 「新しいのを持ってこさせる」 「ったく」 「あっ。ん」 「妙な声を出すな」 「……だって。しみ、る、ぞ。……んっ」 「当たり前だ。塩が入ってるんだからな」 「何?」 「安心しろ。薬としての役割は充分に果たす」 「あっ。何故、そんなことを?」 「自分で分かっているだろ。お前がマゾだからだ」 「……ああ。あっ。ああ。そうだな。お前に塩を塗りこまれているのだと思うと、この痛みも悪くないな」 「…………」 |
(2011/07/30) |
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