869.世の中、食うか食われるかだ(蔵飛) |
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「世の中、食うか食われるかだ」 いつだったか、オレに剣を突きつけて、飛影は言った。 それなら、もう何度もオレに抱かれた彼は、既に死んでいるのだろうか。オレは今、屍を抱いているのか。 ふざけた妄想だ。それに、彼を抱いていても、彼を食っているという気分にはならない。どちらかと言うと、食われている気分だ。 奥深くまでオレを飲み込み、食いちぎろうとでもするかのように締め付ける。気を抜けばそのまま、本当に彼の体内に取り込まれてしまうんじゃないかという気にさせられる。 もっとも、心は既に彼の中に取り込まれ、その一部になっているけれど。 ああ、でもそう考えると。 「……オレはもう、死んでるのかもしれませんね」 だって、死者の時間は動くことはないのだから。 最初に彼を抱いた時に、オレは食われ、死んでしまった。この先、オレの時間が進むことは、オレの想いが変わることは無いだろう。 そして、食われたオレの心は、彼の一部に。 「馬鹿馬鹿しい。死んだ奴が、こんなに温かいわけがないだろう」 腰に足を絡め、動きを止めたオレに続きを促すように自ら体を動かす。そうですね、と、曖昧に笑って頷きはしたけれど。 また強く締め付けられる感覚に、オレは今、飛影に食われているのだと、思わずにはいられなかった。 |
(2011/04/07) |
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