870.この緊張感がたまらない(蔵飛) |
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彼の体に触れるとき、いつも緊張する。きっと、彼はそれどころじゃないだろうから、気付いていないだろうけれど。 唇を重ね、体の線をなぞり、熱い中心を握りこむ。 もう体に染み付いているはずの動き。彼だけじゃなく、名も知らない誰かを相手に何度も繰り返してきた。 それなのに、まるで素人のように、彼の体に触れようと思うだけでオレは緊張してしまう。 愛情を持って誰かを抱くのは彼が初めてだからだということもある。自分では優しさを与えているつもりでも、欲を充たすためだけのセックスに慣れた体が、意思に合わせて動くとは限らない。 壊してしまわないか、傷つけてしまわないか。いや、それよりもっと、幼稚で単純な。 嫌われてしまわないか。 彼の口から吐息が漏れるたび、その表情が歪むたび、オレは幼稚な不安に包まれる。 はじめは、そのことがもどかしく不快であったけれど。今はそれも悪くないと思えるようになった。不安は、なくなればいいとは思うけれど。 この緊張は。 オレをいつもより敏感にさせ、彼の総てを取りこぼさずに感じさせてくれる、この緊張だけは。 この先も、ずっと。飽きることなく続けばいいと……。 |
(2011/07/15) |
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