876.禁止事項(蔵飛)
「なんだ、これは」
「この部屋での禁止事項。そんなに多くないから、ちゃんと守ってくださいね」
「……くだらん」
「あなたにとってはくだらなくても、オレにとっては守ってもらわないと困るんです。例えば、ほら。また土足」
「脱がすのはお前の役目だろう?」
「いつまでオレに甘えている気ですか?」
「嬉々としてやっていたんじゃないのか?」
「やってますよ。でも、それに甘んじないでください」
「勝手だな」
「まぁ、窓を割って入らなくなっただけでもよしとしましょう。それも、オレが窓の鍵を常に開けておいてるからなんだけど」
「…………」
「合鍵。ちゃんと持ってるでしょう?」
「……泪涙石と一緒にくくりつけやがって」
「そうすれば無くさないと思いまして」
「知らないのか? 俺は一度泪涙石を無くしてるんだぜ」
「威張れることじゃないでしょう。それに、あなたは一生をかけてそれを探し出そうとした。出来ることなら、オレもそうなりたい」
「ふん。人間界に腰を落ち着けることを決めたお前を捜す馬鹿が何処にいる」
「じゃあ、例えばオレが消えたら。捜してくれます?」
「…………」
「ねぇ」
「誰が」
「飛影。禁止事項」
「……嘘を吐くこと……?」
「だから。正直に答えて」
「……ふん。お前のその提案に乗るなど誰が言った」
「守れなければ、罰が下ります。いうなればここは、オレの領域ですから」
「いつぞやの能力者気取りか? 貴様の能力などたかが知れている。すべて燃やし尽くしてやる」
「正直に答えたら、都合の悪いことでもあるんですか?」
「何?」
「オレだって出来ることなら罰を与えるような面倒なことはしたくないんですよ。だから、ただ、あなたが正直に答えてくれればいいんです。それとも、言えませんか? 本当のこと」
「俺の言葉が嘘か本当か、どうやって判断するつもりだ?」
「あなたが嘘を吐かないと言ってくれるのなら、それを信じるだけです」
「……馬鹿だな」
「そんなこと、とっくに知っていると思ってましたけど」
「……ない」
「え?」
「実際に、お前が消えてしまわないと、分からない。過程の話で答えても、実際その場になってその行動を取るとも限らない。だとしたら、俺の言葉は嘘になる。ここでは、嘘を吐いてはいけないのだろう?」
「……なるほど、ね」
(2011/06/26)
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