８８０．コーヒー党(はるみち)
「おはよ」 「おはよう」 「悪い。コーヒー入れてくれるかな？」 「嫌よ」 「え」 「だって、切らしているもの」 「え？」 「コーヒー」 「切らしたの？」 「ええ」 「……買いにいってくる」 「待って。今何時だと思っているの？　まだお店空いてないわ」 「そうか。……でもなんで。君らしくないな。買ってこないまでも、残りが少なくなったらそう言ってくれるのに」 「自分で淹れていれば、私が何も言わなくても残りが少ないことに気づくはずなのだけれど」 「……もしかして、遠まわしに責めてる？」 「たまには、貴女が私のために淹れてくれたコーヒーを飲みたいと思っただけよ」 「すまない」 「嘘」 「え？」 「本当は、苛立つ貴女を見たかったの」 「は？」 「イライラしてちょっとしたことであたって。でもすぐに我にかえって反省する。そんな貴女を見たかったのよ」 「……随分と、悪趣味だな」 「そう？」 「そう思ってくれないと、困るな」 「イラついた？」 「……少し」 「そう。良かった」 「……良かった。良かった、か」
(2011/12/27)