890.言葉など不要(はる←せつ)
「何も言わず、ああいったことをするのはやめてください」
「いいだろ。勝ったんだから」
「ですが……。心配するこちらの身にもなってください」
「…………」
「なんですか?」
「あ。いや。心配、してくれてたんだと思ってさ」
「当たり前です」
「家族だもんな」
「…………」
「せつな?」
「え。ええ。家族、ですから。……はるか」
「ん?」
「あなたと。みちるとの間には、言葉なんて不要なのは分かっています。二人はそれだけの濃密な日々をそれまで送って来ていたのだろうし、心の繋がりだってある。ですが」
「君とだって、僕は心の繋がりを感じてるつもりだ。関係の名前は、僕とみちるのソレとは勿論違うけれど」
「それでも。互いを知るまでにはまだ言葉が必要です」
「……せつな」
「な、んです。急に。真面目な顔をして」
「言葉だけじゃ、総てを知ることは出来ないんだぜ?」
「えっ? あ。ちょっと、はるか。待ってください、こんなこと、みちるが知ったら――」
「なんて。冗談だよ」
「えっ?」
「え?」
「あ。いや。そうですよね」
「……怒らないんだな」
「えっ?」
「……まぁいいか。ほら、せつな」
「…………」
「警戒するなよ。何もしないから。ただ、帰るだけさ。僕たちの、家へ」
「……そう、ですね」
(2011/06/07)
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