899.伝言ゲーム(蔵飛)
 ここでオレの噂を流したらどんな風に広まるのか。なんて、赤い空を眺めながら考えてみる。
 魔界でも噂好きのヤツはそれなりにいて、ましてや黄泉やムクロなんて魔界の支配を考えているヤツらならどんな小さな噂でも聞き逃すことはないだろう。
 だとすれば、オレが流した噂は、いつか飛影の元に届く。
 どれだけ歪められて伝わるのか。興味がある。
 どちらにしろ、そのまま伝わったとしても、捻じ曲げられて伝わったとしても、飛影の怒りを買うことは必至なのだけれども。
 そう、流すのは初めから、嘘の情報。オレが黄泉の情夫になったと。
 もし飛影が邪眼を使ってオレを見ているのなら、それは容易く見破られてしまうけれど。きっと、飛影はそれをしないだろう。
 今は覗いているかもしれないけれど、噂を耳にしてからは、それが卑怯なことであると、彼なら感じるはずだ。
 それより何より、彼はオレを信用していない。だからもし覗いた先に噂の場面に遭遇したらと思うと。……見ることは出来ないだろう。
 オレのことは信じられなくても、風の噂は容易く信じるのか。少し腑に落ちないけれど、仕方がない。
「蔵馬様。黄泉様がお呼びです」
「ああ。今行く」
 今日も黄泉の部屋に呼ばれている。黄泉の目的は分かっているが、勿論オレはそれに乗る気などない。たが、噂を作るためには恰好だけでも整えなければならない。
 オレを呼びにきた使いのものはそろそろ訝っているはずだ。あとは、そうだな。鯱にでも黄泉の部屋に入る姿でも見せておけば、充分だろう。
「行くとするか」
 どんな気持ちで黄泉が待っているのか、一瞬頭を過ぎったけれど。それはオレには関係ないことだ。
(2011/7/24)
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