908.悲しき性(星はる)
 どうしてオレは男なんだ。
 アイツを護れるだけの力が欲しいと思った時、男にもなれるという事実にオレはバカにも喜んだ。
 だけど。
「ん」
 鼻から抜ける声。詰めていた息を吐き出しながら、ヤツの体が沈んでいく。オレはそれを、仰向けになったまま、ただぼんやりと眺めていた。
「……動けよ」
「言っただろ。オレは今日乗り気じゃねぇんだよ」
「へぇ」
 にやりと笑い、自ら腰を動かし、オレを締め付けていく。張りのある胸の先から落ちる雫は、過剰に上下するオレの胸に着地する。
 乗り気じゃない。それは事実だった、いや、今でも事実であるはずなのに。熱に包まれた俺のそこは膨張し、何もしないと決めた手はいつの間にかヤツの腰に向かっている。
 心と体は別だと言う、これが男の悲しき性って奴なんだろうか。
「何もしないんじゃなかったのか?」
「うるせぇよ」
 上半身を起こし、上下する胸に顔を埋める。腰を動かすと、ヤツは喉を反らせ短い声を上げた。情を、深く煽られる。
 もし、オレが女なら。きっとヤツの体に欲情することもなかっただろう。いや、そもそもこの関係はオレが男であることに意味があるのだから、ヤツが近づいてくることすらなかったはずだ。
 けど、でも、オレはどうなんだろう。本当に女であれば欲情しなかったと言い切れるのだろうか。心と体が別なのは何も男に限ったことじゃないと、目の前の女が証明してるのに。
 ……バカバカしい。オレは、男だから。だからコイツを抱いてるんだ。
 余計な考えを打ち消すように、ヤツの腰を掴み思い切り突き上げる。降って来る喘ぎ声に中心がまた熱くなるのを感じ、オレは軽い失望と、それ以上の安堵を覚えた。
(2011/08/11)
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