940.迷子ちゃん(蔵飛)
「……何をしている?」
「あ。飛影」
「何をしていると聞いているんだ」
「今は何も」
「今は?」
「さっきまでは迷子だったんですけどね。あなたが、見つけてくれたから」
「コエンマに頼まれただけだ」
「コエンマに?」
「お前が魔界に行ってから二日経っても戻ってこないからだ、バカ者」
「ここらへんは滅多に足を踏み入れなかった上に、前に来たのはもう十何年も前ですからね」
「ふん。……で」
「はい?」
「魔界に迷い込んだ人間は見つかったのか?」
「いいえ。空間の歪みの跡が二箇所あったので、恐らくそちらから人間界へ戻ったのでしょう」
「迷い損だな」
「そうでもないですよ」
「?」
「あなたが迎えに来てくれた」
「……ふん」
「あれ?」
「俺は帰る」
「『俺は』って」
「お前を探し出せと言われただけだ。連れて帰れとは言われていない」
「ちょと。飛影っ」
「離せ」
「会いたかったんでしょう?」
「それはお前だろう?」
「オレ『も』です」
「ふざけるな」
「だから、コエンマの頼みを聞いた。違いますか?」
「違う。報酬を払うと言われたんだ」
「幾ら?」
「金じゃない」
「じゃあ、何?」
「……うるさい」
「え。何で怒ってるんですか?」
「うるさい。モタモタしていると置いていくぞ」
「……はいはい」
「笑うな!」
「はい」
(2011/09/30)
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