971.地域ナンバーワン(外部ファミリー)
「はるか、聞いて。ほたる、持久走大会で一位をとったそうよ」
「え。本当か!?」
「嘘をついてどうするというのよ。賞状を広げてその話をするだけしたら、疲れたんでしょうね、寝てしまったわ。もうそろそろ起こさないと、夜が眠れなくなってしまうのだけれど。はるか、頼んでいいかしら?」
「いいけど。そうじゃなくて。今日、持久走大会、だったのか?」
「そうよ」
「どうして教えてくれなかったんだよ!」
「保護者参加型じゃないもの。校内だけの行事よ。それに、一位を取れるまではるかには黙ってるように言われたの」
「ってことは、一位を取れなかったら?」
「教えないまま」
「どうして」
「貴女が陸上の選手だったことを知っているからでしょう。貴女の娘なのに校内ですらナンバーワンを取れなかったら申し訳ないと思ったんじゃないかしら」
「僕だってそんなに足が速かったわけじゃないさ。第一、長距離だろ? 行ったとしても、せいぜい地区大会止まりさ」
「辞退しただけじゃない。短距離だけに集中したいって言って」
「……そうか。君は何でも知ってるんだったな」
「確か、中距離は一度だけ」
「うん。まぁ。選手が不調で、僕が名前だけの控えだったから」
「でも、結果は優勝」
「……ペースを考えて走るのは、余り好きじゃないんだ。僕はもっと、風のように自由に走りたい」
「ペースを考えられないのは、貴女の戦いを見ていてよく分かっているつもりだわ」
「みちる」
「なあに?」
「……まぁ、いいさ。さて、じゃあ僕はほたるを起こしてこようかな。そうだ。御褒美のキスでもしてあげようか」
「はるか!」
「なあに?」
「……ばか」
(2012/01/19)
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