995.神がかり的な逃げ足(はるみち)
「また、取り逃がしたか」
「なんなの、あれ」
「デスバスターズの作り出した妖魔の生き残りらしい。それ以外は、僕にも」
「珍しいわね、貴女が走り負けるなんて」
「……逃げ足だけは、速いんだ」
「だけ?」
「まともに戦えば、攻撃は当たるんだ。奴もそれを知ってるから、僕が現れると逃げる」
「で、貴女はどうして追いかけないの?」
「――え?」
「私には、どうしても貴女が追いつけないとは思えないの」
「そんなことは」
「じゃあ、無意識かしら」
「何?」
「無意識に、あの妖魔を逃がそうと思ってる」
「馬鹿な。何でそんなこと」
「デスバスターズは崩壊したわ。ということは、あの妖魔には人間に危害を加える以外の生き方もあるということ。だったらそれに賭けてみたい。殺さなくてすむのなら、それに越したことはない。違う?」
「冗談。僕はそんなに甘くないぜ」
「甘いわけじゃないわ。優しいのよ」
「どっちにしたって同じことだ」
「違うわ」
「みちる。僕は」
「だったら。私にそう思わせて。勘違いでもいいから。貴女が、そういう人だと思いたいの。駄目?」
「真実を、知って。幻滅しても知らないぜ?」
「幻滅なんてしないわ。誓って」
「……全く。キミって人は」
(2012/04/18)
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