真っ暗な部屋に明かりが差し込む。人の気配を感じ、眼を開ける。
「……俺、ここで寝てもいいっすか?」
 僕の隣にしゃがみ、眠い眼をしきりにこすりながらリョーマは言った。
「いいけど。どうしたの?」
「堀尾のいびきがうるさくて」
「他の1年は?」
「堀尾が寝る前に寝ちゃいましたよ」
「……そっか。うん。いいよ」
 頷くと、僕は布団から出ようとした。確か、押入れにもう1組布団があったはず…。
「いいっスよ。もう、他の人、寝てるし。俺、ここで寝ますから」
 起きようとする僕を制し、布団に潜り込んでくる。見つめる僕に眼を合わせると、ニッと微笑った。
「……暑く、ない?」
「先輩がいつも俺にくっついてくるから。俺、寒がりになっちゃったんスよ」
 枕を持ってきていないから。リョーマは僕の腕を取ると、そこに頭を乗せた。これでもかというくらいに、体を寄せてくる。
「でも、いいの?朝起きて、こんなところ誰かに見られたら…」
「別にいいっスよ。どーせ、皆知ってんでしょ。俺たちのこと」
「それはそうなんだけど、ね」
 話に聞くのと、実際にこういった場面を見るのとじゃ、違うんだよ。
 まぁ、いいか。幸い、この部屋にはタカさんと手塚しか居ないし。
「それにしても。ズルイっスよね、3年だからって少人数で部屋使えるなんて」
「ま、そのお陰で、キミはこうして避難っていうのを口実に僕と一緒に眠れるわけだから。文句言わないの」
 言いながら、腕を折り曲げ、彼を抱き寄せる。
「……なんだ。気づいてたの」
 彼は僕の腕の中で、つまらなそうな声を上げた。
「どこでも寝れる上に、1度寝たら起きないキミが、いびきごときでそんなことを言うのは可笑しいと思ってね」
 クスクスと微笑い、彼の頬に唇を落とす。彼はくすぐったそうに頭を振ると、猫のように丸まり、僕の首元に顔を埋めた。おずおずと僕の背に腕を回し、抱きしめる。
「リョーマ?」
「辛いっスよ。合宿」
 吐息が、首筋に当たる。顔を押し当てたままなので、リョーマの声は大分くぐもって聞こえた。
「珍しいね。キミがそんな弱音を吐くなんて。まだ、1日目終わったばかりだよ?」
 髪を梳くようにして、頭を撫でてやる。リョーマは位置を確かめるように、僅かに体を動かした。その仕草が妙に猫っぽくて。僕は微笑った。
「練習とか、そういうのは別にいいんスけど」
「けど?」
「周助と2人きりの時間が作れないって言うのが、辛い」
 体を離し、僕を見つめる。暗がりだからハッキリとは解からないが、その眼が揺れていることは感じ取れた。苦笑し、彼の頬に触れる。
「でもその分、ほぼ1日中一緒に居られるよ」
「………。」
 僕の言葉に彼は何も言わず、頬に置かれた手に自分のそれを重ねてきた。何かを、強請るような視線を感じる。
「俺は、二人きりがいいんスよ」
「別に、合宿が終われば2人きりになれるじゃない。今は、滅多に訪れないこの時間を楽しもうよ」
「ヤダ。」
「…我侭だな、リョーマは」
 口を尖らせる彼に、僕は苦笑した。彼の顎を掴み、キスをする。
「ぁガママでも、いい」
 触れるだけじゃ足りないのか、呟くと、彼は自分からキスをしてきた。深く、重ねられる。
「……しょうがないな」
 呟いて、腕を解く。
「周助?」
 不思議そうに僕を見る彼に微笑いかけると、体を起こした。立ち上がり、手を差し伸べる。
「月、見に行こうか」
「…月?」
「そ。今日は満月なんだ。きっと綺麗だよ。去年見つけた、僕だけの秘密の場所に連れてってあげるよ」
「……うん。」





これぐらいのほうがいいよ。リョーマは可愛くないと。不二に駄々をこねるくらいな。



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