「僕の周りを色々と嗅ぎ回ってるみたいだけど。うざったいんだよね。こそこそ隠れてないで、いい加減、出てきたらどうなんだ?」
「っ。………流石、天才・不二周助です。よくボクがここにいるのが解かりましたね」
 広場に出ると、ボクは足についた土埃を掃った。彼がボクに向かって投げた空き缶を、すぐ近くにあったゴミ箱へと投げ入れる。
「そんなに綺麗好きなら、その薄汚い気配を掃除したほうがいいよ」
 ベンチに座ったまま、余裕の表情でボクを眺めている。ボクは構わず彼の隣のベンチへと腰を下ろした。
「それとも…」
 突然変わる声色。彼はゆっくりとボクを向くと、怖いくらい綺麗なその眼を見開いた。
「今、僕が。その汚い気配をこの世から消し去ってやろうか?」
 クスクスと、愉しげに微笑う。その姿に、恐怖と。それ以上の感情を覚えた。流石は、ボクの完璧なまでの計画を根底から覆した男。思わず、笑みが零れる。
「……何を笑ってるんだ?気でも狂ったか?」
 ボクの行動が、彼の更なる怒りを買ってしまったようだった。彼はゆっくりとボクの前に立ち、殺気のこもった眼でボクを見下ろした。ゾクゾクする。
「いえね。ボクを挫折させた人生初の…というより、最初で最後でしょうが、その人間が貴方だと言う事が、嬉しくて。つい…」
「はっ」
 吐き捨てるような笑い。彼は眼を細めると、ボクの右肩を乱暴に掴んだ。左手なのにも関わらず、ギリギリと骨が軋む音が聞こえてくるくらいに。そして、そのままベンチの背もたれにボクを押し付けてきた。鼻先が触れ合うくらいにまで顔が近づく。でもこれは、ほんの一瞬の出来事で。ボクは抵抗する暇すらなかった。
「やっぱり、君は莫迦だね。最初で最後?違うよ。これからは僕をコンプレックスに生きていくんだ。裕太と同じ。僕に大敗したという傷を背負って、ね」
 クスリと微笑うと、彼はボクから顔を離した。同時に、肩の痛みも消える。
「っはぁっ。はぁっ。ゲホッ、ケホ」
 どうやら、ボクは息を止めてたらしかった。彼が離れた瞬間、大量に肺に送られた酸素に、ボクは咽てしまった。胸に手を当て、深呼吸を繰り返す。
「あはははは」
 頭上から降り注ぐ、愉しげな笑い。ボクは大きく息を吸い込むと、彼を見上げた。
「……何?」
 ボクの視線に気づいた彼が、蒼い眼を見開く。
「ぁ……」
 何かを言おうと口を開いたけれど、言うべき言葉が見つからず。ボクは中途半端に開けた口を、そのまま閉じた。
 どうしたら、いいのか。先程から、胸の鼓動が止まらない…。
「情けないね。また、何も出来ないまま終わるの?」
 凍りつくような視線と声。けれど、それらがが突き刺しているボクの胸は、信じられないくらいに、熱い。
「……それでも、構いません」
「は?」
「寧ろ、その方がいいです」
 今にも押しつぶされそうなプレッシャーに、胸を押さえながら言った。言葉の足りないボクの発言に、彼が眉をしかめる。ボクは深呼吸をして立ち上がった。正面から、彼を見つめる。
「ボクは、キミのお望みどおり、不二クンというコンプレックスを一生背負って生きてあげますよ」
「………。」
「そうすれば、ボクは、一生キミのことを忘れませんから」
「なっ……」
 ボクの言葉が予想外だったのか、彼は眼を丸くした。絶句している。今なら、行けるかもしれない。
 ボクは彼の肩を掴むと、眼を瞑り、強引にキスをした。途端、下腹部に走る痛み。
「……っ」
 腹部を押さえ、膝から崩れる。頭上に、再び冷たさを持った視線を感じた。恐る恐る、顔を上げる。
「前言、撤回するよ。君にいつまでも憶えられてても困るから…」
 言葉を切り、ボクの前にしゃがみこむ。彼の手が、ボクの頬に触れた。そこから感じたのは、確かな殺意。
「今すぐ、君の頭の中から僕の記憶を消してあげるよ」





不二観は…もう、これがお決まりのパターンって感じで行きます。
終わり方が似てても、内容が似てても。決まりだから、仕方がない(笑)
こうでなくちゃ不二観ぢゃない!くらいの勢い。
……たまには違うのも書いてみようと想うけどサ。



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