大きく息を吸い込み、そして吐き出す。血に塗れたグリップを握り締めると、自然と口元に笑みが浮かんだ。これでやっと、裕太とタカさんの仇が取れる。
「思い切りやれと竜崎先生は言ったが――」
 握りを確かめている僕に、背後から声が聞こえてきた。振り返らずに、一歩だけ後退する。
「妙なことは考えるなよ」
 距離が近くなった分だけ、彼の気持ちも強く伝わる。その優しさに、僕は思わず吹き出してしまった。
「妙なことって…。君は僕が何をすると思ってるんだい?」
 クスクスと微笑いながら、振り返る。彼は、一瞬怯んだような顔をした後、深い溜息を吐いた。
「観月戦のようなことだ。お前、性格悪いのバレるぞ」
 僕から眼を逸らし、僕の向かいのコートを見た。多分、そこにいるのは今回の、僕の獲物。
 確かめるように目線をやると、僕はすぐに彼に戻った。その視線を遮るようにして、立つ。
「別に良いよ、バレたって。僕は周りの評価なんて気にしてないから」
「オレが気にする」
「『こんなヤツと恋人だなんて』って?」
「………まあ、そういったところだ」
 目線を逸らし、呟く。心なしか赤い頬に、僕は思わず彼を抱きしめたい衝動に駆られてしまった。深呼吸をし、その想いを留めさせる。
 それよりも今は、だ。復讐者としての任務を果たさなきゃ。タカさんとは直接関係ないけど、大きく見れば、氷帝全員が仇ってことで。
「手塚」
「……なんだ?」
「止めても無駄だよ」
 余裕の笑み。彼に勝つ自信はある。というより、復讐者となった今、負ける気はしない。
「オレが言ったって聞かないだろう?」
「まぁね」
「それに、勝ってくれるならそれでいい。アイツには悪いがな」
 深い、溜息を吐きながら彼は言った。その姿と、言っている内容の違いに、僕はまた笑った。
「……なんだ?」
 それが不服だったのか、彼の眉間の皺が、少しだけ深くなる。僕は彼にニヤリと微笑ってみせると、首を横に振った。
「ううん。君も、結構非道いんだなって」
「…何がだ?」
 無自覚だから、たちが悪い。
「何でもないよ。いいんだ。そういうところも好きだから」
 彼の勝利への執念はきっと、僕の復讐心よりも真っ直ぐで強い。だからこそ、彼はどこまでも強く綺麗なんだろう。
 いつか、僕も彼と肩を並べられるうようになりたい。その為には。僕はこの先、一度たりとも負けちゃいけないんだ。例えそれが、醜い復讐心から成った勝利への執念でも…。





手塚くんは誰よりもかつことにこだわってると思う。
AVENGER・不二。これからもどんどん悪を斬って行きます。

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