「英二、任せた」
「おうっ。敵はとってくるぜぇ」
 軽く手を合わせ、不二と入れ違いに英二はコートに入った。おれはそんな2人を見て溜息を吐くしかなかった。
「……どうしたの、タカさん。溜息なんか吐いちゃって」
 うな垂れるオレの肩に手を置き、顔を覗き込んでくる。
「いや…また、不二の力になれなかったなって思ってさ」
「僕の力?」
「この間は棄権。今回は完敗だ。おれたちのダブルスじゃ駄目なのかな」
「まだたったの2敗じゃない。それに、僕がタカさんの力になれなかったっていう風にも考えられるでしょ?大丈夫だよ。このあと、英二たちが負けるはず無いから。このままだったら、多分、また越前くんがオイシイとこ持ってくんじゃないのかな。君の友達に勝って」
 言うと、不二はコートの向こうに視線を移した。おれもそっちに目を向ける。
 ………亜久津。
 亜久津は危険だ。普段は凄く優しいのに、勝負事になると人が変わる。相手が口だけの奴だったら尚更だ。越前は実力あるから、そこらへんは大丈夫だと思うけど。でも、あの2人の間で何かあったみたいだし。
「なぁ、不二。越前は――」
 大丈夫だよな?そう言おうとして、言葉が止まった。おれの隣にいるはずの不二は、いつの間にか木陰に入り、木にもたれるようにして眼を閉じていた。
「不二?」
「ん。何?」
 眼を開けて、欠伸まじりに答える。その姿におれは溜息を吐いた。
「英二たちの試合、見ないのかい?」
「見ないよ。どうせ勝つから。タカさんもこっち座りなよ。さっきまで試合だったんだ。僕たちに休む権利はあると思うよ」
 無邪気に微笑い、手招きする。
「おれは別に…」
「いいからっ」
 立ち上がり腕を掴むと、不二は無理矢理おれを座らせた。
「ったく。こういうときばっかり、力強いんだからなぁ、不二は」
 諦めの溜息と共に、愚痴をこぼす。
「愛の力だよ」
 おれの手に指を絡めると、不二は楽しそうに微笑った。
 その顔に忘れてしまいそうになるけど。おれたちは、こんなことをしてるべきじゃないんだよな。なんてったって、負けたんだから。
 溜息を吐き、不二を見つめる。
「不二は悔しくないのかい?」
 おれの言葉に、不二は目を丸くした。きょとんとした顔で、おれを見つめる。
「……何で、そんなこと訊くの?」
「何でって、負けたんだよ?おれたち」
「そうじゃなくって。何で負けたら悔しいの?」
「……え?」
 不二の言葉に、今度はおれが目を丸くする番だった。不二の手が伸びてきて、おれの頬を包む。
「はいはい。顔、引き締めて。そんなに無防備な顔してると、キスしちゃうよ?」
「………ふっ」
「なんてね。冗談」
 鼻先が触れるか触れないかの位置で微笑うと、不二は手を離した。いつの間にか止まってた息が、おれの口から溜息と混ざって出てきた。
「ね。達成感と空虚ってさ、似てると思わない?」
「何?」
「だから、さ。目標。そう簡単に達成しちゃったらさ、虚しくなるだけだよ。次が見つかるまではもっともがかないとね。そうは思わない?」
「………前向きだな、不二は」
「そうでもないよ。ただ、こう言う風に考えた方が楽しいかなって思うから」
 伸びをして、宙を仰ぐ。おれはこんなに暗い気持ちなのに、眼を瞑って風を感じている不二の口元は、微笑っていた。
「凄いな、不二は」
「ん?」
「おれはそんな発想、出来ないよ」
 暗い気持ちを表に出さないだけで精一杯だ。
「別に、タカさんがそういう発想をすることは無いよ」
 視線を下ろし、ふわりと微笑う。少しだけ体を動かし、おれにくっつくと、不二は肩にもたれてきた。
「お、おい、不二…」
「発想は僕がするから。タカさんはそれに乗っかってればいいんだよ。ね?」
 頭を引き剥がそうとする手を取り指を絡めると、不二はおれの返事も待たずに眼を閉じてしまった。





この二人だけはいつまでも倖せだよなぁ。。。
いつかタカさん(ノーマル)を亜久津と不二で奪い合いとかさせてみたい。
……いや、無理だね。アイドルはあくまで不二ですし(笑)

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