1.ほおづえついて(不二塚)
 溜息を吐き、グラウンドを眺める。遠くから、スミレちゃんや部員達の声が聞こえてくる。
 僕がここにいても、連れ戻しに来る人は、もういない。今までだったら、乱暴に教室のドアが開いて、何をしているグラウンド10周だ!なんて怒鳴り声が飛んできたのに。
「……淋しいなぁ」
 今日、何度目かの溜息を吐く。
 手塚が九州に行ってからまだ3日しか経ってないというのに。こんなんじゃ、先が思いやられるよ。
 頬杖を崩し、机に突っ伏せる。
 と、ポケットから大きな音がして、僕は顔を上げた。滅多に聴けない音。でも、僕が何よりも望んでいた音。
 慌ててそれを取り出し、ボタンを押す。
「っ手塚!?」
「大石から連絡があったぞ。最近お前が練習をサボっていると」
「ねぇ。何で今まで連絡くれなかったの?僕ずっと待って――」
「何をしている!さっさと練習に行け!グラウンド30周だ!」
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