3.再会(不二跡)
「……久しぶり」
「……久しぶり、だな」
 酷く余所余所しい挨拶。別れ方は至って穏やかだったのに。
 まあ、それから2年も何の連絡も取ってなかったんだから仕方がない、か。
「忍足と上手くやってる?」
「……てめぇんとこよりはな」
「…………そう。」
 会話が続かない。
 元々、僕たちの間にはあまり会話がなかった。だからって、こんなに気まずい雰囲気は流れてなかった。もっと、居心地の良い…。
「手塚の奴は、今は?」
「今日、これから帰ってくる。だから、これ」
 言うと、僕は彼に持っていたビニール袋を掲げて見せた。
「俺様には一度も手料理なんて作りやがらなかったくせに」
「だって、専属のシェフが居るじゃない。それに、庶民の味は君には似合わないよ」
「……散々、庶民的なことをさせたくせにな」
「だから別れたんだよ。君には、僕みたいな庶民的な奴は相応しくないと思ったから」
「よく言うぜ。てめぇだって、庶民的だとは言い難いぜ」
「君よりは、庶民的だよ」
 我ながら、ずるい言い訳だと思った。別に、彼が悪いわけじゃなかったし、僕自身もそんなに悪かったわけじゃないと思う。
 強いて言うなら、あの時間総てが間違いだったんだ。
 互いに一番に想い合う相手がいたのに、適度なスリルと…埋められない淋しさみたいなものから逃れる為に、一緒にいただけ。生産性のない行為と時間。
 ただ、思ったよりも長くは続いた。1ヶ月ももたないと思ってたのに、実際は1年ももった。それだけ、馬が合ったってことかもしれない。
 でも。それがいけなかったのかな。今、こうして対峙していると、あのときの熱が蘇ってくる。時折見せた、彼の刹那げな表情と共に…。
「……ねぇ、跡部」
「手塚が帰ってくるんだろ?俺なんかに構うんじゃねぇよ」
 僕の言葉を遮り、彼は言った。可笑しいな。今まで殆んど彼に思考を読まれたことがなかったのに。それだけ顔に出ていたのか。それとも…。
「携帯番号は変わってねぇ。手塚が居なくて淋しくなったら、いつでも呼べ」
「………でも、君には忍足がいる」
「昔のお前の言葉を借りるなら、『何事にも刺激は必要』だ。それと。……俺も、今、てめぇと同じ気持ちなんだ」
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