4.好き(不二塚)
 気づくのが遅すぎて。言うタイミングを逃した。
 何度も言おうと思うのだが、一度タイミングを逃すと、次に言おうと思ったときには恥ずかしさが出てしまう。
「ねぇ、君は。一度も僕のこと、好きって言ってくれないね」
 額を重ね、蒼い眼でオレを見下ろすと、不二は呟いた。
 切欠は、不二に押し切られるようにして繋いだ関係。
 だから不二は、未だオレの想いを疑っている。……疑っているのとは、違うか。オレは、一度も本音を伝えていない。
 きっと、行動にしなければ伝わらないことがあるように。言葉にしなければ伝わらないこともあるのだろう。
 不二の眼に、何度も口を開きかけ。それでも、結局。また、口を閉じてしまった。
 不二が、歪んだ笑みを作る。それを見て、オレも、歪んだ笑みを浮かべた。
「好きだよ。例え、君が僕を憎もうとも」
 オレを強く抱きしめ、耳元で囁く。その時、触れ合う頬を、一筋の何かが伝った。
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