9.はじめての日(不二幸)
 少し苦味のあるそれに、僕は顔を歪めた。それを見た彼が、ゴメン、と微笑う。
「さっき、薬飲んだから」
「知ってるよ。分かってて、キスしたんだ。でも」
 分かっててもやっぱ苦いや。微笑いながら、またキスをした。今度は、彼が苦笑する。
「苦いと言いながらも、キスはするんだ」
「ん。なんか、クセになりそうだよ」
「変な奴だな」
「お互いにね」
 クスクスと微笑いあい、キスを交わす。それは触れるだけのものから、徐々に深さを増していく。羽織っていただけのシャツを剥がすと、彼の白い肌が現れた。そこに唇を落とし、ゆっくりと身体を倒す。
「…不二っ」
 圧し掛かろうとする僕を拒むように、胸を押した。その手を取り、ベッドに押し付ける。
「………嫌?」
 真っ直ぐに彼を見下ろし、微笑う。彼は少し顔を紅くすると、僕から眼を逸らした。
「嫌ってわけではないけど」
「じゃあ、良いよね?」
「ちょっ…」
 掴んでいた腕を振り解くと、彼は僕の目の前に手を翳した。痛みにか、彼の顔が歪む。
「……あ。ごめん」
 呟いて。彼の額に唇を落とすと、僕は身体を起こした。彼の身体も、起こしてやる。
「ったく。すぐに調子に乗る…」
「だから、ごめんって」
 頬を膨らしたような彼に苦笑する。僕は湿った髪を梳くようにして撫でると、そのまま指を滑らせ、彼を抱き寄せた。僕の肩に頬を寄せ、彼が溜息を吐く。
「病み上がりなんだ。昨日の今日で、体力が残ってるはずないだろ」
「…そこまで体力は落ちてないって言ったじゃない」
「……………あれほどに体力を使うとは思わなかったんだ」
 苦笑しながら反論する僕に、彼は頬を赤らめながら呟いた。
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