12.的中(不二リョ)
 ああ、この事だったんだ。なんて、今更、だ。
 でも、例え初めからその意味が理解っていたとしても、僕はこうなっていたのだろうと思う。
「……はよ」
 腕の中で目を覚ました彼は、僕を見ると、頬を紅らめながら言った。
「おはよ」
 彼を抱き寄せ、キスをする。触れるだけのつもりだったのに。彼が離してくれないから。僕は彼の頭を掴むと、荒めのキスをした。唇を離した彼が、満足そうに微笑う。
「周助、好き」
「僕も好きだよ。リョーマのこと」
 呟いて抱きしめると、彼は僕の顎と首の間に顔を埋めるように擦り寄ってきた。今にもゴロゴロと喉を鳴らしそうなそれに、苦笑する。
 もう、元の関係に戻ることは出来ないんだろうな。戻る気も、ないんだけど。
『周助、猫好きだし、好かれるでしょう?でも、気をつけなさいよ。一時の優しさのつもりが、一生の付き合いになる場合があるから。貴方は優しいから。なんだかそうなる気がするわ』
 まさか、この猫が、彼の家の猫ではなく、彼自身だったなんて。あの時は思わなかったな。確かに、彼を猫のようだと思ったことは何度もあったけど。
 でも、姉さんの予感は絶対だから。僕はこれから、彼と一生付き合うことになるんだろうな、なんて。姉の手によって、決められた未来。絶望?そんなのする筈がない。寧ろ、僕は…。
「リョーマ」
「ん?」
「良かったね。僕たちの愛は絶対だって」
「……なに、それ」
「さて。何でしょう?」
 頭にはてなを浮かべ見つめる彼に笑顔を向けると、僕はその額に唇を落とした。
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