22.NO(不二リョ)
 僕の膝の上。腕の中で、もう何度クリアしたか知れないゲームを退屈そうにプレイしている。あまり懸命にやっているようにも思えない。多分、指がやり方を覚えているのだろう。
 それでも、顔を覗き込もうとすると怒るから。
「いいよね?」
 彼の邪魔にならないように耳元で囁く。ずっと抱きしめたままの腕に、少しだけ力を入れて。体を密着させる。開け放たれた窓からは蝉の鳴き声が聴こえてくるというのに、彼の体温を温かいと感じてしまう。
「……好きにすれば」
 暫くして、彼はゲームのスイッチを切ると呟いた。YESとは、決して言わない。でもそれは、NOというわけではない。
 手に、彼の温もりを感じ。僕は微笑った。
「それって、YESってことだよね?」
 耳に唇を寄せ、囁く。息を吹きかけると、くすぐったいのか、彼は身を捩った。それに合わせて、手を離す。振り返る彼に、唇を重ねた。
「まったく。素直じゃないんだから」
 顔を背けた彼を抱きしめ、真っ赤になっている耳に微笑いかける。
「でも、そう考えると、君って案外素直だよね」
 彼の言うNOはYESで。でも、YESはNOじゃない。
「……うるさいっスよ」
 不貞腐れたように言うと、彼は僕の手を握り、体を預けてきた。
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