24.新しい靴(乾海)
「新しい靴を買ってみた。というか、探してきた。俺の恋人はなかなか俺のものになってくれないから。せめて一部だけでも、と考えてみた。そして探し出したのが、これだ。箱を開け、靴を取り出す。真新しい、その独特の匂いがそこから溢れてきた。手で仰ぎ危険性を確認した後、鼻を近づけてみる。
『……ああ。海堂の足のかをり』」
「何バカなことやってんすか!」
 頭を思い切り蹴られ、俺は靴と熱い口づけを交わしてしまった。
「行き成り暴力とは。しつけがなってないな、海堂」
 靴から唇を離し、振り返る。ベッドの上に座っている海堂は、口から妙な息を出しながら俺を睨みつけていた。
「うるせぇ。人の行儀をする前にアンタの独り言と、変態じみた趣味を止めろ。さっきっから全部聴こえてんだよ。気持ちわりぃ」
 俺に罵声を浴びせながら、どんどん顔が赤くなっていく。俺は立ち上がると、海堂の隣に座った。その顔を、覗き込む。
「何だ?顔が赤いな。照れたのか?」
 俺の言葉に口を閉ざすと、海堂は俯いた。恥ずかしさでか、その肩が震えている。
 今なら、行けるかもしれない。それとも、誘っているのか?
 まあ、どちらでもいい。
 俺は手を伸ばすと、海堂の肩を抱き寄せた。
「優しくしてやるぞ?」
「っるせぇ!離せ、この変態!」
 その声と共に、俺は新しい靴と二度目の口づけを交わした。
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