29.息も絶え絶え(不二幸)
「っ、不二。も、駄目」
 身悶えながら、彼は絞り出すような声で言った。僕の下にいる彼は、息が上がり顔が紅潮している。
「お願っ、から」
 潤んだ眼で僕を見つめる。肌に触れている僕の手を掴むと、引き剥がそうとした。
 限界、なのかもしれないな。
 理解っていても、ここまできてやめることは出来ない。
 僕は彼の手をベッドに押し付けると、首筋に軽く噛み付いた。
「くっ……」
 彼の体が跳ねる。
「わかったよ」
 震える肩に、僕は諦めの溜息を吐いた。敏感になっている彼の体が、吐息だけでも反応する。
「ぁははっ。くははははっ」
 僕が諦めたと理解ったからだろう。彼は身を捩ると堪えていたものを吐き出すように笑い出した。その綺麗な顔が崩れるほどに。
「幸村。そろそろ慣れてくれないと、僕も困るんだけどな」
 目に涙を溜めたまま、壊れたように笑っている彼に呟くけど。僕の声は届いていないようだった。
 体を起こし、乱れた服を直す。
「ごめっ…だって俺、こういうの苦手で。っはは」
 彼の服を直してやるけど、小刻みに揺れる体の所為で、なかなか上手くボタンを嵌めてやれない。
「そろそろ落ち着こうよ」
「んっ」
 彼の肩を抱きしめ、キスをする。
「……ごめん」
 唇を離すと、彼はぴたりと笑いを止めた。紅かった頬も、あっという間に元の白に戻る。いつもそんなだから。わざとなんじゃないの?とか思うけど。彼の顔は本当に申し訳なさそうで。僕はまた、溜息を吐いた。
「ったく。普段なら笑い上戸なのは僕のほうなのに」
「頑張って慣れるから。だからもう少し待っててくれよ」
 苦笑する僕に、彼が苦笑して返す。その光景がなんだか可笑しくて、僕たちは声を上げて笑った。
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