41.変。(不二ヤマ)
「どうもいまいちしっくり来ないと思いませんか」
 僕を猫のように抱き上げ、膝に乗せると、彼は呟いた。頬に当たる無精ヒゲがくすぐったい。
「何が」
「何がって言われましても、ねぇ」
 訊き返す僕に、彼は困ったように微笑いながら頬を掻いた。抱きしめていた彼の手が解けたから。一度立ち上がると、今度は向かい合うようにして彼の膝に座った。その首に腕を絡ませ、口づけを交わす。
「こういう事が、ですよ」
 首筋に舌を這わせシャツのボタンに手をかけた僕に、彼は苦笑した。僕の顔を挟み、無理矢理に引き剥がす。
「変だとは思いませんか。ボクの方が年上だし、体格も良いのに」
「背が高いだけでしょ」
「キミよりは筋肉ありますよ」
「力で勝てないくせに?」
「それはっ、不二クンが」
 言いかけて、彼は頬を朱に染めると、俯いた。ただでさえはっきりとしない彼の声が、ますますくぐもる。
「僕が、何」
「だから、その」
 追及すればするほど、彼の頬は赤くなっていく。それが可愛くて。僕はクスリと微笑うと、彼を強く抱きしめた。そのまま、押し倒す。
「キミが、そうやっていつも」
「いつも」
「いつも、ボクに意地悪をするから」
「意地悪じゃないよ。それだけ、僕が大和君を好きだって事」
 もごもごと言う彼に、僕は微笑うとヘンテコな眼鏡を取った。僕と目が合い、更に顔を真っ赤にした彼は、両手で顔を覆った。その手を掴み、強引に左右へ開く。
「これは、その愛情の証だよ」
 クスリと微笑うと、もう一度、彼にキスをした。彼の手から、力が抜ける。
「だとしたら、かなりヘンテコな愛情ですね」
 僕を見上げると、彼は苦笑した。
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