54.うた(不二リョ)
 聴こえてくる歌声に、導かれるようにして眼を醒ました。見える程の眩しい朝の陽に、開けた眼を細める。
「ああ。起こしちゃった?」
 歌を止めると、周助は俺を振り返った。おはよう、と微笑う。
「……はよ」
 欠伸混じりに返すと、俺は眩しさにそのまま閉じてしまいそうになる眼を開けるべく、体を起こした。周助の隣に座る。
「さっきの、何の歌?」
「多分、言っても分からないよ」
 見上げる俺の髪を掻き揚げ、そこに唇を落とすと、優しく微笑った。俺を抱き寄せ、髪を梳くようにして頭を撫でる。
「何?気になるの?」
「んー…。その歌がって言うより、周助の歌が気になる」
 周助の背に腕を回すと、俺はその胸に猫のように顔を埋めた。くすぐったいよ、と周助が微笑う。
「ねぇ。もう一回歌ってよ」
「…え?」
「周助の声、好きだから。もう一回歌って。今度は鼻歌とかじゃなくて、俺の為に」
 顔を埋めたままだから、少しくぐもった声になる。それがくすぐったいのか、周助はクスクスと微笑いながら、いいよ、と言った。
「でもさ。もしかして、それを子守唄にしてまた寝る気なんじゃないの?」
 周助がしゃべる度に、僅かに胸が動く。それがくすぐったくて。
「そうかもしんない」
 俺は笑いながら答えた。しょうがないな。周助が笑う。
「リョーマが望むなら。僕でよければ、幾らでも歌ってあげる」
「……うん」
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