77.サボリ決定(不二切)
「ふーじーサンっ」
「……やっぱり、君か」
 授業が始まってからずっと感じていた視線。試合が終わって休んでる僕の後ろから聴こえた声に、小さく溜息を吐いた。
「気づいてたんスね」
「ま、あれだけの熱視線を向けられればね」
 試合の為にコートに出て行った英二たちに視線を向けたままで答える。遠くから僕を呼ぶ声がしたけど、手で大きく罰点を作ると、彼は分かったとでも言うように大きく頷いた。
 英二は…キーパーか。
「いいんスか?」
「いいよ。どうせ審判の誘いだし。それに、勝敗は見えてるからね」
 英二がキーパーをしている限り、相手のチームは点を入れることは出来ないだろう。うちには、サッカー部は無いからね。
「そんなことよりも」
 振り返らずに問う。後ろに手を伸ばすと、彼が手を握ってきた。
「赤也、授業は?」
 手を強く引き、茂みに隠れていた彼を引っ張り出す。草塗れになっていた彼は、案の定、立海の制服を着ていた。
「サボったの?」
「……へへ」
 呆れた、という意味を込めて言ったのに。彼は褒められた時のように、少し照れて見せた。また、溜息が出る。
「戻りなさい」
「嫌ですよ。なんだかんだでもう一週間以上会ってなかったんスから」
「それは君が英語の補習を受けてたからでしょう。……もしかして、英語があるから今日サボったの?」
「何でも御見通しって?やっぱり不二サンは凄いっスね」
「あのねぇ…」
 目を輝かせながら言う彼に、僕はまた溜息を吐いた。
「そんな溜息ばかり吐かないで下さいよ。俺、今、不二サンに会えてすっごく嬉しいんですから」
 嬉々としながら僕の手を強く握る彼を、じっと見つめる。次第に、犬の耳と尻尾が見えてきて。脱力したように、僕は微笑った。
 全く。しょうがないな。
「じゃあ、着替えてくるから少し待ってて」
「え?」
「制服に着替えてくるんだよ。ジャージ(こんな)姿じゃ、街を歩けないからね」
 一度だけ彼の手を強く握ると、僕は手を離した。途端、彼の顔が怖いくらいに緩む。
「って事は。不二サンも…」
「こんないい天気だしね。赤也も居るし。サボり決定」
「マジっスか?やりぃ!」
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