80.イノセンス(不二リョ)
「不二先輩は?」
「ん。僕はいいよ」
「そ」
 差し出されたえびせんを断ると、リョーマはそれを美味しそうに頬ばった。ポロポロと、欠片がその膝に落ちる。
 全て食べ終わった所で、彼は立ち上がるとその欠片を床に落とした。向かい合うようにして、僕の膝に座り直す。見つめるその顔に、僕は思わず微笑った。
「……なに微笑ってんすか」
「欠片、ついてるよ」
 膨らした彼の頬に唇を寄せる。その欠片を舐め取ると、口の中に微かに梅の香が広がった。
「……っ」
 額を重ね、クスリと微笑う。見つめると、彼は顔を真っ赤にしたまま硬直していた。
「ん?」
「…んでもないっス」
 呟き、額を離す。赤い顔を更に真っ赤にすると、彼は背を丸めて僕の肩に額を押し付けた。ギュッと、僕を抱き締める。クスリとその赤い耳に微笑いかけると、僕も彼の背に左腕を回した。右手は、彼の髪を梳く。
「好きだよ」
 自然と零れる言葉に。何故か僕の頬も赤くなってしまった。彼に見られたくなくて。強く、その小さな体を抱きしめる。
「俺も、好き」
 僕の体に唇を当てている所為で、くぐもってしまっていたけど。僕の耳に、はっきりと彼の声が届いた。その澄んだ想いに、余計に顔が赤くなる。咳払いをし、それを振り払うと、僕は体を離した。その肩を掴み、見つめ合う。
「僕って、単純なのかな」
「……なんで?」
「リョーマとこうして一緒に居るだけで、凄く倖せな気持ちになれるんだ」
 クスリと微笑い、キスをする。
「じゃあ、俺もきっと単純なんスね」
 再び赤くなった顔で微笑うと、今度は彼の方から僕にキスをした。
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