81.ピアス(不二リョ)
「っ」
 鋭い痛みが走り、俺は身体をビクつかせた。大丈夫だよ、と耳元で微笑い声。それと共に、痛みが走ったそこには、ぬるっとした温もりが触れた。
「ふふ。リョーマの血の味」
 唇に付着した俺の血を舐め取ると、先輩は微笑った。開かれた、蒼い眼が妖しく光る。
「何か、ドラキュラみたいっスね」
「何?噛み付いて欲しいの?」
「そんなこと言ってないっスよ」
 あー、と大きく口を開けて寄ってくる先輩の顔を押し退ける。冗談だよ、と微笑うと、先輩は箱の中から蒼を一つ取り出した。それを、俺の左耳につける。見つめる先輩の左耳には、琥珀色が光っている。
「これでよしっと」
 呟くと、先輩は俺に鏡を差し出した。見つめるオレの左耳には、先輩の眼の色をした小さなピアス。
 リョーマは僕の眼の色のピアス。僕はリョーマの眼の色のピアス。これをお互いだと思えば、淋しくなんてないでしょ?なんて先輩は言ったけど。これじゃ…。
「何かいっつも先輩に見つめられてるみたいで、ちょっと嫌かも」
「そう?」
 クスクスと微笑うと、先輩は俺の手から鏡を取った。反転させ、自分の顔、左耳に光る俺の眼を満足そうに見つめる。
「僕はいいと思うけどね。いつでもリョーマに見つめられてるの。実際、そんなに見つめてくれることは無いし」
 鏡をずらし、本物の俺の眼を覗き込む。
「っ」
 その真剣な眼に、俺は思わず眼をそらしてしまった。頬が熱い。
「試合してるときは平気なのにね」
 変なの。楽しそうに微笑うと、先輩は俺の頭を撫でた。そのまま、俺を抱き寄せる。
「ま、暇なときにでも、このピアスを僕の眼だと思って見つめてさ。慣れてくれればいいよ」
 ふふ、と微笑うと、先輩は俺の耳にそっと触れた。
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